我、白山眼鏡店に行かん。②

扉を押すと、そこは上野とは思えない静謐な空間に包まれていた。

 

すぐそこにはアメ横があるというのに、静か。店員は店の奥で「いらっしゃいませ」と言ったっきり、私に近よろうとはしない。「放置プレイなのか……」そう思ったときに「どうぞお好きなようにメガネをかけてみてください」と店員が近よってき、そして、すぐに奥へ帰る。「一体なんなんだ?!」混乱する頭をかかえながら、webで目星をつけたメガネフレームを探す。

 

私が探していたのは「POST」というフレーム。程よく四角くて、ちょっとカジュアルで、しかし、オンにもオフでも使える万能メガネフレームだ。実際に手に取ってみると、なんてステキなフレームなんだこと!こんなメガネで知的活動したい!!はやる気持ちをおさえつつ、黒か茶色のフレームで迷う私。店員がよってきて「この鏡をご覧ください」と鏡をうながしてくれる。さすが万能メガネフレームである。こんな私でも顔になじむ。

 

迷っていると、また店員が近よってきて「姿見もご使用ください」と。ありがたく姿見を使って、全体的なバランスで黒か茶色かを考えてみるも、視力が0.1以下なので全身すらボヤけて見えない。ド近眼なのである。したがって姿見に顔をギリギリまで近づけて、黒か茶色に選ぶことに。

 

迷うこと30分弱。

 

迷いすぎと思ってらっしゃる読者諸氏よ。考えてみて欲しい。フレームだけで3万円越すのだ。迷うでしょ?「この選択で私の一生が決まる」その覚悟で黒か茶色で悩んでいた。もう、どの色も捨てがたい。ここで客観的意見が欲しく、店員に聞いてみるも「どの色もお似合いです」との言葉が。くぅぅ。

 

そこで思い出してみたのが、以前にパーソナルカラー診断を受けた知識である。詳しいことは忘れてしまったのだが、私の肌はイエローベースで、カラーは「スプリング」ということ。そして黒のようなハッキリとした色は、私には浮いてしまうということも。その視線で改めてフレームを選んでみると、やはり黒よりも茶色のほうが肌なじみが良い。店員に茶色を選択したことを伝えると、スムーズに手続きを行うことになった。

 

ここから3階で視力検査などをしてもらった。この視力検査等の感想はwebで調べた通り、丁寧で親切にやってもらった。満足である。注文して出来上がるのは一週間後とのこと。とにかく丁寧に仕上げて欲しいので、心をこめて「お願いします」と言って白山眼鏡店を出た。

 

一週間後。

 

再び白山眼鏡店の扉を押す。

 

完成したメガネをかけてみたら、まぁ、それはそれはステキな仕上がりになっていたではありませんか。やっぱり茶色を選んでよかった!ウホウホと喜び、店員にお礼を言って白山眼鏡店を出た。なんだかこのメガネをかけて見たもの全てが違って見える。世界ってこんなに美しいんだっけ……。そんな私に夫が冷静に言った。「歴代のメガネと大差ないんじゃないの?」

 

ガーン。

 

総額45400円。安い買い物ではないが、オススメはできる品であることに間違いはない。まぁ、自己満足でもよいのである。白山眼鏡店でメガネを購入したことに悔いはない。これで私もオシャレメガネの仲間入りができるってもんよ(江戸っ子調)。